1.2つのツユクサ

身近に生えている夏の野草ツユクサを観察しますと、苞や葉鞘に毛が生えていないものと、毛があるものが見られます。

ツユクサ (2タイプ咲いています) 


ツユクサ


ケツユクサ (ツユクサの1品種のようです)

保育社の図鑑によると、ツユクサには変異が多く、苞の外面に長白毛があるもの(ヒメオニツユクサ ・ ケツユクサ)と書かれてありますので、ここではケツユクサと表記します。

   1.長白毛の有無

ツユクサ  ケツユクサ

後ろから
苞は毛がありません 苞には長白毛が生えています

  
 2.花びらの形

ツユクサ ケツユクサ
     
花びらはスコップ形でややほっそりした感じです 花びらは逆ハート形で幅広くふくよかです


 3.苞の形 

ツユクサ ケツユクサ
        
苞は先が長くありません 苞は先が長く伸びています


4.X字形の仮雄しべの形
   

ツユクサ ケツユクサ


X字形の仮雄しべは、蝶のような形です
 

X字形というよりも、キノコのような形です


5.2タイプが隣り合って、咲いている場所もある


ケツユクサは、私の近くでは平地にはあまり見られなくて
海岸付近と山地で見ることができます。

その場所の中には、ツユクサとケツユクサが隣り合って咲いている所があります。 

なぜ、こんなに近くに2タイプが咲いているのかとても不思議です。

こんなに近くに咲いているならば、
付近に中間型(雑種?)があるかもしれない・・と思い
探してみましたが見つかりません。

Netで調べていたら、「ツユクサの庭」さんがHPの中で、“この2タイプは交雑子孫ができにくい”ことを人工交配を試みて確かめておられました。 

とても興味深い内容です。 

また、“一見同じツユクサだが、別の生態種かもしれない”とも考察されていました。 


上:ツユクサ   中:ケツユクサ  下:ツユクサ 


******** 追 記 T (08.10.13) *************************************

最近の研究では、「ツユクサの有毛型は2n=44または46、無毛型は2n=88の倍数異数体」(藤島弘純・橘伸一1973)だそうです。

学名は、
Commelina communis L.・・・ツユクサ (無毛型 2n=88)
Commelina communis L. f. ciliata Pennell・・・ ケツユクサ (有毛型 2n=44または46)

と、ケツユクサはツユクサの1品種に位置づけられています。 



Commelina communis L.
・・・ツユクサ
 (無毛型 2n=88)



Commelina communis L. f. ciliata Pennell・・・ ケツユクサ
 (有毛型 2n=44または46)


ツユクサの庭」さんのHPには、ツユクサとケツユクサは、両者は気孔の大きさが違うという興味深い論文のことが書かれていました。 

図1  ツユクサの気孔のようす 図2  ケツユクサの気孔のようす


私もそれぞれの気孔を観察しましたところ、ツユクサの方が気孔が大きいことが観察されました。 (図1.図2は同じ倍率×800で撮影しています) 

ツユクサの気孔の長さ 2.5μm×25目盛=63μm ケツユクサの気孔の長さ 2.5μm×18目盛=45μm

気孔の大きさは、無毛型のツユクサは55〜63μm、有毛型のケツユクサは45〜50μmと明らかに大きさが異なっていました。

この2タイプのツユクサを交配したらどうなるのでしょうか。 結果は「2.2つのツユクサ交配実験」をご覧下さい。



1.2つのツユクサ     2.2つのツユクサ交配実験     3.両性花・雄花     4.ツユクサの閉鎖花  

 5.ツユクサの受粉 
    6.ツユクサの仮雄しべ   7.ツユクサの訪問昆虫

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