7.ツユクサの訪問昆虫と雄しべ


訪問昆虫がツユクサの花を訪れたところを観察してみますと、まず青い花弁の近くにある3本のX字形雄しべをめざして飛んできます。 (写真1) 

ツユクサの花に止まる時には、長い0字形雄しべの花糸と雌しべが、都合の良い足場になっています。 (写真2)  この画像では、後ろ足をちょうど雌しべの柱頭に乗せています。 昆虫(ホソヒラタアブ?)の足に他のツユクサの花粉が着いていれば、みごと他家受粉が行われたところです。

写真1  X字形雄しべをめざして飛んでくるホソヒラタアブ  写真2  O字形雄しべの花糸・雌しべを足場にする


コハナバチの仲間が、ツユクサを訪れた場面です。 やはりまずX字形雄しべをめざして飛んできます。 (写真3) 花粉が少ないと思ったのか、すぐに体を反転させてY字形雄しべの花粉を食べました。 (写真4) さらに、1番先頭にあるO字形雄しべに気がついて、花粉を食べ始めました。(写真5)

写真3 まずXー花粉を食べる 写真4 すぐにYー花粉を食べる 写真5 Oー花粉に気がついた


このコハナバチの場合、Y字形雄しべに体には触れましたが、もっとも遠くにあるO字形雄しべには体が触れていません。

 写真6 ・7は、Y字形雄しべの花粉をさかんに食べる、ホソヒラタアブ(?)です。 


写真6  Y字形雄しべの花粉を食べる 写真7 Y字形雄しべの花粉を食べるホソヒラタアブ


このY字形雄しべについては、今のところどのような役割があるのか、まだよくわかっていないそうです。

どのような役割があるか考えてみました。
訪問昆虫によく目立つX字形雄しべのすぐ近くに、Y字形雄しべを配置してあるので、この雄しべは昆虫にとても目につきます。 したがって花粉を食べられることも多いが、同時に体に着くチャンスも多いはずです。 
また、昆虫がYー花粉を見つけて食べているときには、もっとも目立たないO字形雄しべの花粉が体に着きやすくなります。  
つまりY字形の雄しべは、X字形雄しべとO字形雄しべの中間に位置することで、花粉を食べられやすくしながら、Yー花粉やOー花粉を訪問昆虫の体に着け、他家受粉に貢献するという役割があるのではないでしょうか。


時には、もっとも目立たないO字形雄しべの花粉を、ちゃっかりみつけて食べているホソヒラタアブもいました。 (写真8)

写真8  O字形雄しべの花粉を食べるホソヒラタアブ


ツユクサの雄しべは、葯の形を3通りに変え、それぞれの花粉の量や形も変えて、さらにその配置までも工夫がなされていて、あらためて「ツユクサの花は素晴らしい!!」と思いました。
                                                                (2006.9.)



******** 追 記  (2010.10.1) *****************************************

最近の丑丸敦史博士らによる研究により、Y字形雄しべの役割は、訪問昆虫に正規の止まり方をさせること、O字形雄しべの花粉をただ食いさせないようにすることであるということがあきらかになりました。

 *参考文献 
 Atushi Ushimaru, Takeshi Watanabe, and Kensuke Nakata, 2007. Colored floral organs influence pollinator behavior and pollen transfer in Commelina communis (Commelinaceae) Amer. J. Bot. 94: 249-258.



1.2つのツユクサ     2.2つのツユクサ交配実験     3.両性花・雄花     4.ツユクサの閉鎖花  

 5.ツユクサの受粉 
    6.ツユクサの仮雄しべ   7.ツユクサの訪問昆虫

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