2.2つのツユクサの交配実験

最近の研究では、「ツユクサの有毛型は2n=44または46、無毛型は2n=88の倍数異数体」(藤島弘純・橘伸一1973)で、ケツユクサはツユクサの1品種に位置づけられています。

ケツユクサはこのように、ツユクサの品種と分類されていますが、「ツユクサの庭」さんがHPの中で、“この2タイプは交雑子孫ができにくい”ことを報告しています。 とても興味深い内容でしたので、私もこれら2タイプの交配実験を行ってみることにしました。 



Commelina communis .
・・・ツユクサ (無毛型 2n=88)


C. communis f. ciliata ・・・ ケツユクサ (有毛型 2n=44または46)


 1.前日処理〜交配

花の咲く前日の午後に、つぼみがついているツユクサとケツユクサを集めます。 ピンセットで萼と花弁をゆっくり開き、雌しべとX字形雄しべを残し、Y字形雄しべ1個とO字形雄しべ2個を取り除きます。 (図1) X字形雄しべは、雄の機能がないと確認済みですので(ここを参照)、切り取らずにそのまま残しています。

翌朝、ツユクサとケツユクサの花がそれぞれ開きます。 花には雌しべとX字形雄しべ3個だけがあり、雌しべの柱頭には、まだ花粉が着いていません。 (図2)  
図2はケツユクサが花を開いた写真です。 この花を種子親(♀)として、この花に同様に処理したツユクサの花粉(♂)を着けます。  

 図1  明日咲くツユクサのつぼみ  図2  翌朝開いた花 ケツユクサが種子親(♀)の花

図2のケツユクサを種子親(♀)、ツユクサを花粉親(♂)として、受粉した3時間後に柱頭を調べてみますと、花粉が花粉管を伸ばしていました。 (図3) 13個の花に交配した結果、10個が結実しました。(図4)

 図3  花粉管を伸ばしている ケツユクサ種子親(♀)×ツユクサ(♂)  図4  結実 ケツユクサ:種子親(♀)×ツユクサ:花粉親(♂)


 2.すべてしいなの種子

(1)ケツユクサを種子親(♀)×ツユクサを花粉親(♂)として交配し約1ヶ月後、10個の果実から種子が29個できました。
それらは、すべてしいなで正常な種子は1つもできませんでした。 

***ケツユクサを種子親(♀)×ツユクサを花粉親(♂)としてできた種子 (受粉後27日〜30日)***


No.1 しいな2 *

No.2 しいな3 *

No.3 しいな4

No.4  しいな2

No.5 しいな3

No.6 しいな4

No.7 しいな4

No.8 しいな1 ・ No.9 しいな3

No.10 つぼみ受粉 しいな3

*黒色の種子ができましたが、ふわふわしているので正常な種子かどうか疑問でした。 種子を開いてみると液体が満たされており、 1日放置したところ、白色のしいなも黒い種子もつぶれてしまいました。 (以下の写真)
翌日種子はすべてつぶれてしまった

これらの黒い種子は、胚も胚乳も未発達で、これらはすべて
しいなでした。


(2)ツユクサを種子親(♀)×ケツユクサを花粉親(♂)として、14個の花に受粉させたところ、すべて果実ができました。(図5) 
  14個の果実から種子が53個できましたが、正常な種子はまったくできず、すべて白色のしいなでした。

 図5  結実 ツユクサ:種子親(♀)×ケツユク:花粉親(♂)

***ツユクサを種子親(♀)×ケツユクサを花粉親(♂)としてできた種子 (受粉後20日〜23日)***
 *No.7〜No.13の画像は省略しました。


No.1 正常な種子0 : しいな4

No.2  しいな4 

No.3  しいな4

No.4  しいな4

No.5  しいな4

No.6  しいな4

No.7  しいな4

No.8  しいな4

No.9  しいな4

No.10 しいな4

No.11 しいな4


No.12 しいな4

No.13 しいな4


No.14 つぼみ受粉 しいな1

今回の交配実験の結果、(1)ケツユクサ:種子親(♀)×ツユクサ:花粉親(♂)の場合も、(2)ツユクサ:種子親(♀)×ケツユクサ:花粉親(♂)の場合でも、できた種子はすべてしいなでした。  ツユクサとケツユクサは、やはり非常に交雑種を作りにくい(できない)ようです。 

ツユクサとケツユクサは、苞や葉鞘の毛の有無だけでなく、花弁の大きさや形、X字形雄しべの形、気孔の大きさなど形態にもいくつかの違いが見られます。  さらに、このように交配しても交雑種ができないのならば、もしかしたらケツユクサはツユクサの1品種ではなく、別の種である可能性もあるのではないかとも思えます。  どなたか詳しいことをご存じの方は教えて下さい。
                                                             (2008.12.5)


1.2つのツユクサ     2.2つのツユクサ交配実験     3.両性花・雄花     4.ツユクサの閉鎖花  

 5.ツユクサの受粉 
    6.ツユクサの仮雄しべ   7.ツユクサの訪問昆虫

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