5.ツユクサの受粉

ツユクサの受粉は念が入っています。なんと3段階もの 受粉をしています。

A: 朝、花が開いたとき B: 午前中 C: 午後1時頃〜
もうすでに、雌しべには
花粉が着いています。
つぼみ受粉(自家受粉)のようです
昆虫による、他家受粉をします 雌しべ・雄しべが巻き戻り、
再度 自家受粉をします

ツユクサは朝花を咲かせた時点で、
もうすでに雌しべには花粉がついています。・・・A

気をつけて観察してみると、どうやらほとんどの花が
すでに受粉を終えている様子です。

そこで、Aの「つぼみ受粉」での結実の割合はどのくらいか
調べてみようと思いました。



1. 朝花が咲いてすぐに、雄しべ・花びら2枚を切り取ります
   
   
朝咲いた花    雄しべを切り取ります 2枚の花びらも切り取ります

これで、BとCによる受粉の可能性はありません。 訪問昆虫や風などの影響を受けないように室内で行いました。




ツユクサは結実すると花柄を「くの字」に曲げ、
すぐに実をふくらませ始めるので
翌日には、結実したかどうかほぼわかります。 

2日後にはさらに実がふくらみます。

結実しなかった花はポトリと落ちてしまいます。
2日後の実

64個の花の雄しべ・花びらを切り取り結実するかどうかの結果をまとめました。

調べた花の数 結実したもの 結実
しなかったもの
枯れたもの 結実率
64個 54個 10個 0個 64個のうち54個が結実した

84.4%



 
次に
 雄しべや・花びらを切り取ったことで 結実率に影響があるかもしれないので、
花粉をちゃんとつけた場合も行ってみました。

2. 同じく雄しべ・花びらを切り取り、他の花の花粉をつけてみた場合 


雄しべを切り取ります  他の花の花粉を柱頭につけます 2枚の花びらも切り取ります


60個の花で行い、結果をまとめてみました。

調べた花の数 結実したもの 結実
しなかったもの
枯れたもの 結実率
60個 58個 2個 60個のうち58個が結実した

96.7%

ほとんどが結実しました。 
雄しべや・花びらを切り取ったことによる結実率への影響はほとんど無いと思われます。


今回調べた数は少ないのですが、簡単な実験を行った結果から

  
 ツユクサは、「つぼみ受粉」の段階では、
    約 8割〜(9割)が自家受粉するようです。

    なかなか高い割合でつぼみ受粉を行っているようですが、
    Bの昆虫による他家受粉もできる。

    さらに たとえ昆虫が訪れなくても、
    午後になると雌しべ・雄しべが巻き戻り、
    再度 自家受粉をしてなるべく種子を作るようにする
    Cの仕組みも持っている。

  

  後日 「花の自然史」(大原 雅 編著)という本の中で、

 ・花を開いたときに花粉が付着している率は93% 
(山田、1991)
 ・自分の花粉による結実率は82.1% 
(濁川、1998)  

  と報告されているのがわかりました。   また
  『 ツユクサは他家受粉花の特徴をもつ同花受粉花という、
  ふしぎな花なのである。 』とも書いてありました。
 
   
     このようにツユクサは、種子を作るために3段階もの
     受粉の仕組みを持っている花だったんですね。



1.2つのツユクサ     2.2つのツユクサ交配実験     3.両性花・雄花     4.ツユクサの閉鎖花  

 5.ツユクサの受粉 
    6.ツユクサの仮雄しべ   7.ツユクサの訪問昆虫

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