高濃度BPA暴露で男性に性機能障害 中国労働者対象の職業病研究

農業情報研究所(WAPIC)

09.11.12

  中国の職業病研究が、誰もが毎日接する多種のプラスチック製品に含まれる化学物質=BPA(ビスフェノールA、環境ホルモンの一種)が男性の勃起不全やその他の性的問題を引き起こすらしいことを突き止めた。

 中国国立職業安全保健研究所が資金を提供し、オックスフォードの”Human Reproduction”誌の最新号に掲載されたこの研究は、高濃度のBPAに曝される中国の4つの工場で働く634人の男性労働者と、BPAが存在しない工場の男性労働者の性的健康状態を比較した。

 BPAを扱う工場の労働者は、勃起不全に見える者が4.5倍多く、射精が困難に見える者は7.1倍に達した。これら労働者の性機能障害は、この仕事に就いた後、1年以内に始まったという。

 研究は、この発見は、労働現場でのBPA暴露が男性の性機能に悪影響を与える可能性があることを最初に証拠立てるものと言う。

 D. Li, Z. Zhou, D. Qing, Y. He, T. Wu, M. Miao, J. Wang, X. Weng, J.R. Ferber, L.J. Herrinton, Q. Zhu, E. Gao, H. Checkoway, and W. Yuan ;Occupational exposure to bisphenol-A (BPA) and the risk of Self-Reported Male Sexual Dysfunction,Human Reproduction,November 10:2009.doi:10.1093/humrep/dep381
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 BPAの健康影響に関するこれまでの研究は、すべて動物実験に基づくものであった。動物実験の結果を人間に当てはめることはできないというのが化学企業やBPA擁護者の主張であった。しかし、今回の人間を対象とする研究の結果が信頼できるかぎり、このような主張は崩れる。

 これら労働者が暴露されるBPAの濃度に比べると、普通の消費者が曝されるBPAの濃度は微小だ。従って、この研究は、普通の消費者にとっては大した意味がないと言えるかもしれない。しかし、今のところ、低濃度ならば影響がないという証拠もない。直接人間を対象とする研究で健康悪影響の可能性が示されたこと自体に大きな意味がある。

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