農業情報研究所食品安全ニュース:2017年8月5日

 

オランダ発・フィプロニル鶏卵スキャンダル 安倍・小泉農業改革が目指す農業モデルの危うさ

 

小泉農業改革(安倍政権の農業改革)が目指すのは面積も人口も九州と同じだが、農産物の輸出額は世界第2位のオランダ型農業だという。そのオランダに発する食品安全にかかわるスキャンダルでヨーロッパが大揺れに揺れている。

オランダ食品消費者製品安全管理局(NVWA)が先月24日、鶏に寄生するシラミの一種を駆除するために使われたネオニコチノイド系殺虫剤・フィプロニルに鶏卵が汚染されていることを発見、オランダ国内の7つの養鶏農場を閉鎖した。卵からフィプロニルが検出された4農場からの卵はリコール、他の3農場は予防原則に従って閉鎖した(Eggs recalled after banned pesticide found on poultry farms,DutchNews,17.7.24)。

しかし、スキャンダルはそれだけでは終わらなかった(Dozens more egg producers shut down as pesticide scandal spreads,DutchNews,17.7.27)。81日には、NVWAX-NL-40155XXのナンバーの製品(卵)に人に“急性”健康被害を引き起こすほどの高濃度のフィプロニルが発見されたと、一特定農場からの卵は食べないように消費者に対する緊急警報を発した。他の卵のフィプロニル濃度も高いが、人に危害を及ぼすほど濃度ではない。ただし、子どもは食べない方がいいという(Dutch food safety board issues urgent warning over a batch of eggs,DutchNews,17.8.1)。

2日には、スキャンダルの中心企業が1年以上も前(20166月)からフィプロニルを使っていたことが判明した(Contaminated eggs may have been sold in Dutch shops for a year: Volkskr,DutchNews,17.8.2)。翌3日にはオランダ最大のスーパー・Albert Heijnが14の異なるタイプの卵を店頭から撤去する騒ぎとなった(Albert Heijn removes 14 types of eggs from its shelves as scandal spreads,DutchNews,17.8.3)。

昨4日には、英国のBBCが、ドイツのジャイアントスーパー・Aldiが、フィプロニルに汚染されている恐れがあると、すべての卵を店頭から撤去したと伝えている。ドイツ当局者は、最大1000万の汚染卵がドイツで売られている可能性があると言っている(Aldi pulls eggs from German stores over fipronil poison fear,BBC,17.8.4)。フィンランドのYLE紙は、今週、数百万の鶏卵がドイツ、オランダ、ベルギーの市場から撤去された、オランダではおよそ1000の工場的農場が毎年110億個の卵を生産、その半分以上は主にドイツなどに輸出されていると伝えているFood safety authority: Tainted Dutch eggs will likely not reach Finland,YLE,17.8.4)。

 

オランダの鶏卵は、加工品に含まれるものは別として、日本には入っていない。問題は、このスキャンダルが日本政府が目指す農業モデルの一端を示していることだ。そう言えば、オランダは15年前の豚肉飼料禁止ホルモン・メドロキシプロゲステロン・ アセテート(MPA)騒動の震源地でもあった(EU:ソフトドリンクと豚飼料に禁止ホルモン 農業情報研究所 02.7.16)。日本もオランダの轍を踏まないように、ご用心、ご用心。

 

ところで、フィプロニルとは?

「日本でも19964月に登録され、これを含む薬剤は、稲の育苗箱施用や播種時土壌処理用として多様な商品名で販売されている。家庭用殺虫剤(ゴキブリ用)にもこれが含まれているものがあるし、犬猫のノミ・ダニ駆除に極めて簡便で有効な獣医薬(フロントラインー背中肩の部分の中央の毛を分け、一滴たらすだけで効果は1-2ヵ月持続する)としても広く普及している。急性毒性に関しては劇物指定(1%以下は指定なし)、魚毒性は最高のD類に次ぐC類に分類されている。メーカーは変異原性、催奇形性はないとしているが、試験データの詳細は不明である(『農薬毒性の事典・改訂版』三省堂、163頁)。まったくの蛇足ではあるが、筆者と10年間起居を共にしたゴールデン・レトリバーのPaw君(このホームページのトップページの写真参照)は、昨年5月、白血病で逝った。朝晩の散歩の途中の道端・荒地・駐車場などに何の配慮もなく撒かれた除草剤、遺伝子組み換え品などどんな有毒成分が含まれているかわからないドッグフード、何が原因か特定しようもないが、フロントラインを愛用しており、これとの関連を疑うわけではないが、気がかりなことの一つではある」(フランス:殺虫剤フィプロニルで蜜蜂大量死 農業情報研究所 03.6.9)。

その他のフィプロニル関連情報(農業情報研究所)

 EU フィプロニル殺虫剤の使用制限へ 減少が激しい蜜蜂を保護するため,13.7.17

 フィプロニル等殺虫剤論争が激化、バイエル社労組は「工業的」養蜂批判,04.3.1

 フランス、フィプロニル殺虫剤を販売停止に,04.2.24

 フランス:農業者・農薬企業、フィプロニル・イミダクロプリド殺虫剤禁止の動きに反駁,04.2.23

 フランス司法官、フィプロニル製品(殺虫剤)の販売停止を命じる,04.2.20

 フランス:蜜蜂大量死の原因はフィプロニルによる種子被覆処理と判明,03.9.20