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EU:CAP改革で非公式閣僚会合、6月決着を目指す

農業情報研究所(WAPIC)

03.5.13

 公式閣僚会5月10日、ギリシャのコルフ島にEUの農相が集まった。共通農業政策(CAP)改革案を討議する非合が4日間の予定で始まったからである。この会合では、遺伝子組み換え体(GMO)問題にも触れることになる。9日、米国高官が、近々、EUのGMO承認モラトリアムをWTOに提訴すると発表したためである。

 CAP改革については、現在のEU議長国・ギリシャとEU農業担当委員・フランツ・フィシュラーは、6月に交渉を終え、2004年から改革実施に入ることを望んでいる。昨年7月に始まった改革論議は、今までのところ、決着に向けての前進がほとんど見られない。最大の争点は、「デカップリング」である。フィシュラー委員は、農業生産者に対するほとんどすべての直接支払いを生産のレベルから切り離し、2000−2002年の実績に基づく農場単位の一括固定支払に置き換えることを提案した。フランス・スペインを中心に多くの国がこれに反対、明確な支持を表明しているのはイギリスとスウェーデンだけである。多くの国が、全面的デカップリングに反対、「部分的デカップリング」を主張している。

 フィシュラー委員は、「部分的デカップリング」については、各国の提案が余りに多様で、議論を長引かせるだけと拒否している。フランスのゲマール農相は、コルフ島でも、6月に決着させねばならない理由はなく、全面デカップリングには反対を貫くと発言した。もう一つの反対の急先鋒・スペインの農相は、地方選挙のためにこの会合を欠席した。この会合で決定的方向が具体化することはないであろう。

 しかし、フィシュラー委員は、記者団に対し、6月に決定がなされることは、次第に明確になってきたと言明した。フィシュラー委員は、WTO農業交渉でのEUの立場の強化のために、9月のメキシコ・カンクンでのWTO閣僚会合の前の改革決定を望んでいる。6月に決定の見通しの根拠は明らかでないが、ファイナンシャル・タイムズ紙は、農相の間には楽観論が広がっていると報じている。ある外交官は、フランスも、改革のいくつかの技術的困難を解決するために「非常に建設的に」動いており、フランス政府は予想以上にソフトな路線を取っていると示唆したという。

 デッドロックを乗り越えるために、理事会は、4月30日、最高レベルの作業グループを立ち上げた。これは、難航したアジェンダ2000の改革に際しても取られた手法である。グループは、今週、初会合を開き、5月26−27日の公式閣僚理事会前の来週、第2回会合を開く。他方、フィシュラー委員は、妥協を手繰り出すべく、勢力的な二国間協議を始めている。来月11−12日のルクセンブルグでの閣僚理事会で結果ははっきりするであろう。ここでフランスがなお妥協を拒めば、議論がいつ決着するか、見通しは立たなくなる。

 いずれにせよ、欧州委員会提案がそのまま通ることがあり得ないことだけははっきりしている。

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