アマゾン流域 昨年に続く深刻な干ばつの兆候 森林破壊で恒常化の恐れ

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.17

  英国・ガーディアン紙によると、アマゾン流域が昨年に続き今年も深刻な干ばつに襲われそうだ。昨年の記録的干ばつは、通常ならば幅が1マイルにもなる多くの支流が干上がらせ、地域の不可欠の輸送手段である船の航行を不可能にした。ブラジルは地域全体に非常事態宣言を発したほどだ(ブラジルアマゾン 記憶にない干ばつ 米国を襲う強大なハリケーンと直接関連,05.10.3)。しかし、こんな干ばつは一世代に一回起きるかどうかで、続いて起きることはないだろうと期待された。ところが、今年も既にその兆候が現れているという。気候変動や違法伐採・牧畜や大豆栽培の拡大のためのアマゾン森林破壊が影響しているのではないかという懸念が広がっている。

 Drought threatens Amazon basin,Guardian,7.17

 昨年の干ばつが始まったボリビアとの国境近くのブラジル・アクレ州では、通常はヨーロッパのどの河川よりも巨大な河川に砂州が現れ始めている。通例ではこれは今から3ヵ月後の乾季末期にしか起きないが、アクレでは今年、6月から7月初めまでの40日間、雨が降っていない。これは以前には聞いたことがないこと、アクレの政府技術専門家は、植生が非常に乾燥しているから深刻な森林火災の危険があると言っている。

 ダ・シルバブラジル環境相は、この干ばつには、昨年の記録的ハリケーンももたらした南西大西洋とメキシコ湾の記録的な海水温が関係していると言う。しかし、丸裸 にされた土地から流れ出す微砂が堆積、河がせき止められるようになっており、違法伐採による雨林の破壊も一因と指摘されているとも言う。

 一エコロジストは、継続する樹木の除去が、既に17%の森林を失った地域の乾燥の決定的要因だ、「科学は、雨の50%が蒸散と通して水を循環させる樹木から来ることを示している。もし樹木を失えば、降水を失うことになる」と言う。

 環境相は、違法伐採と牧畜・大豆栽培のための森林破壊の撲滅を決意した、過去1年で、汚職官吏を含む300人が逮捕されており、1500のビジネスが停止され、60万㎥の違法伐採木材が押収されたと言う。

 しかし、連年の”非常事態”を回避するためには、既に手遅れだったのかもしれない。

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