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万葉集第15巻
3724番
【狭野弟上娘子 】
君が行く 道の長手を繰り畳ね
焼き滅ぼさむ 天の火もがに
あなたが行く 長い道のりを 手繰り寄せ畳み込んで 焼き滅ぼしてしまう天の火があればいいのに
3726番
【狭野弟上娘子 】
このころは 恋ひつつもあるむ
玉櫛笥
明けてをちより すべなかるべし
今のうちは 恋しさを耐えていられるけど 夜が明けたら 遣る瀬なさで悲しくなるでしょうね
3729番
【中臣朝臣宅守】
愛しと 我が思ふ妹を 思ひつつ
行けばかもとな 行き悪しかるらむ
心から愛してるあなたを想いながら行くせいだろうか こんなにも行くのが辛いのは
3730番
【中臣朝臣宅守】
恐みと 告らずありしを み越路の
手向に立ちて 妹が名告りつ
峠の神の祟りが恐いから あなたの名前を口にしないでいたのに 峠に立って とうとう声を出してあなたの名を呼んでしまったよ
3732番
【中臣朝臣宅守】
あかねさす 昼は物思ひ ぬばたまの
夜はすがらに 音のみし泣かゆ
昼間はあなたを恋偲んで 夜は一晩中 声をあげて泣いているんだ
3739番
【中臣朝臣宅守】
かくばかり 恋ひむとかねて
知らませば 妹をば見ずそ あるべくありける
こんなにも 恋しくなるなら あなたと出逢わなければ良かった
3740番
【中臣朝臣宅守】
天地の 神なきものに あらばこそ
我が思ふ妹に 逢はず死にせめ
天地の神々のご加護があるのならば 愛しいあなたに いつかは逢えると信じて 生き長らえていこう
3750番
【狭野弟上娘子 】
天地の 底ひの裏に 我がごとく
君に恋ふらむ 人はさねあらじ
世界中 天上・地底の果てにだって 私ほど こんなに愛しい人を想ってる人はいないわ
3752番
【狭野弟上娘子 】
春の日の うら悲しきに 後れ居て
君に恋ひつつ 現しけめやも
物悲しい春の日に 残された私は あなたを想い 気が変になりそうよ
3753番
【狭野弟上娘子 】
逢はむ日の 形見にせよと
たわや女の 思ひ乱れて 縫へる衣ぞ
逢える日まで 私と思って大切にしてね か弱い私が 切なさに心焦がして 縫った衣なのですから
3757番
【中臣朝臣宅守】
我が身こそ 関山越えて
ここにあらめ 心は妹に 寄りにしものを
私は 幾つもの山を越えた遠いこの場所に居るけれど 心はいつでもあなたのそばに居るよ
3759番
【中臣朝臣宅守】
立ち返り 泣けども我は 験なみ
思ひわぶれて 寝る夜しそ多き
何度も何度も繰り返し泣いては 泣いてもどうしようもないのだと思うと 悲しさに打ちひしがれて眠りにつく夜が多いよ
3765番
【中臣朝臣宅守】
山川を 中に隔りて 遠くとも
心を近く 思ほせ我妹
遠くはなれて居るけれど 心だけはいつも私を思っていておくれ 愛しい人よ
3767番
【狭野弟上娘子 】
魂は 朝夕に 賜ふれど 我が胸痛し 恋の繁きに
あなたの深い愛を いつも感じているけど 切なくて苦しいの 恋しさが募るばかりで
3773番
【狭野弟上娘子 】
君がむた 行かましものを 同じこと
後れて居れど 良きこともなし
あなたと一緒に行きたかった 越前にひとりで居るあなたと淋しさは変わりません 都に居ても何も楽しい事などないわ
3774番
【狭野弟上娘子 】
我が背子が 帰り来まさむ 時のため
命残さむ 忘れたまふな
愛しいあなたが 帰って来る日のために 死にそうなほどの苦しさに耐え 生きていきます 私を忘れないでね
3775番
【中臣朝臣宅守】
あらたまの 年の緒長く 逢はざれど
異しき心を 我が思はなくに
長い間逢っていないけれど あなたを恋しく想う心に変わりは無いよ