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万葉集第8巻

1432番
【大伴坂上郎女】
我が背子が 見らむ佐保道の 青柳を
 手折りてだにも 見むよしもがも

あなたが 今見ている 佐保道の青柳の 手折った枝でも せめて見られたらいいのに
離れた場所に居る人が、今見ている枝を見ることは不可能ですね、愛しい人が見ている同じ風景を同じ時に見たい。
会えない時間の中でも同じ感性を共有したいと思うのが恋心でしょう。

1452番
【紀女郎】
闇ならば うべも来まさじ 梅の花
 咲ける月夜に 出でまさじとや

暗闇の夜なら あなたが来なくてもわかるわ 梅の花が咲き誇る こんな良い月夜に 来てくれないなんて

1498番
【大伴坂上郎女】
暇無み 来ざりし君に霍公鳥
 われかく恋ふと行きて告げこそ

暇がないからと訪ねて来ないあの人に ホトトギスよ私がこんなに恋慕っていると告げておくれ
「忙しい・忙しい」は殿方の専売特許?「仕事と私とどっちが大事なの?」と昔の女性も言ったのでしょうか・・・
仕事が口実だとわかっているから、待つ身は切ないのですね。

1500番
【大伴坂上郎女】
夏の野の 繁みに咲ける 姫百合の
 知らえぬ恋は 苦しきものそ

夏の野に ひっそりと咲いている姫百合のように 相手に伝わらない片思いの恋は 苦しいばかり

1510番
【大伴家持】紀女郎へ贈った歌
なでしこは 咲きて散りぬと
 人は言へど 
我が標めし野の 花にあらめやも

なでしこは咲いて散ったと、恋多き女の心変わりを人々が噂してるよ まさか あなたの事ではねいよね

1518番
【山上臣憶良 】
天の川 相向き立ちて 
我が恋ひし君来ますなり
 紐解き設けな

天の川に向き合って立ってる 私の愛しいあの方がくる 紐をほどいて寝所の準備しよう

1529番
【山上臣憶良 】
天の川 浮津の波音 騒くなり
 我が待つ君し 舟出すらしも

天の川の 天に浮かぶ桟橋の波音が 聞えてくるよ 私が待つあの方が 舟を漕ぎ出したんだね

1630番
【大伴家持】
高円の 野辺の容花 面影に
 見えつつ妹は 忘れかねつも

高円の野に咲く ヒルガオの花を見てると 可愛らしいあなたを思い出し 気持ちがつのるよ